川内原発の再稼働をしないよう求める意見書

 

 

2014(平成26)年9月5日

 

株式会社九州電力 御中

 

320-0821 栃木県宇都宮市一条4丁目5番11号

            028-636-0596fax028-637-4886

            大木一俊法律事務所内

            「原発いらない栃木の会」

               代  表   島  田  晴  夫

 

               同      大  木  一  俊

 

第1 意見の趣旨

   川内原子力発電所1号炉及び2号炉の再稼働をしないよう求める。

 

第2 意見の理由

1 はじめに

我々は、2011(平成23)年3月11日の東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所事故(以下「福島第一原発事故」という)を機に、栃木県内において、@原発をなくす、A持続可能なエネルギーの推進及びB放射線について考えることを目的として結成された市民団体である。

貴社は、2013(平成25)年7月8日、川内原子力発電所1号炉及び2号炉(以下「川内原発」という)の再稼働を原子力規制委員会に申請し、原子力規制委員会は、2014(平成26)年7月17日、新規制基準に適合しているとの内容の審査書案を公表した。これを受けて、貴社は、地元自治体の同意を得て、今年中にも川内原発を再稼働させる方針であると報じられている。

しかしながら、以下のとおり、川内原発は再稼働させるべきでない。

2 福島第一原発事故の被害の深刻さ

福島第一原発事故により、原子力安全神話が根底から覆り、国民は、原発事故の恐ろしさを目の当たりにし、その甚大な被害に直面することになった。

高濃度の放射性物質に汚染された地域では、長期にわたり人が住むことも立ち入ることもできなくなり、住民の平穏な生活は破壊され、地域の文化も共同体も消失させられた。福島第一原発事故から3年以上が経過した現在でも、多くの住民が不自由な避難生活を強いられ、家族が分散した生活を余儀なくされている家庭も少なくない。

放射性物質による汚染は、福島県のみならず、栃木県を含む近隣都県にまで及び、住民は現在も外部被曝、内部被曝の危険にさらされている。特に子どもたちへの影響が憂慮されるところである。また、放射性物質による汚染は、農林漁業や観光業をはじめとするその他の企業活動にも、風評被害をも含む深刻な影響をもたらしている。

これら深刻な影響をもたらした福島第一原発事故は、汚染水問題に見られるように、いまだ収束の見通しも立っていない状況にある。

このような深刻な被害をもたらす原発事故を万が一にも二度と繰り返さないためには、原発を廃止するほかない。

 

3 世論は一貫して原発反対であること

福島第一原発事故以降現在まで一貫して、国民世論は、原発反対である。  

すなわち、福島第一原発事故を経て、2012年夏に行われた「エネルギー・環境の選択肢」に基づく一連の意見聴取会、パブリックコメント、世論調査において、9万件近く寄せられたパブリックコメントのうち9割近くが原発ゼロシナリオを支持したのみならず、その他様々なプロセスとあわせ、「過半の国民が原発に依存しない社会を望む」とまとめられた。

直近においても、2014(平成26)年1月25日、26日に行われた、共同通信社の全国電話世論調査では、原発の再稼働に反対するとの回答が60.2%に上り、賛成の31.6%のほぼ倍であった。また、同年3月15、16日に朝日新聞社が行った全国電話世論調査では、反対が59%、賛成が28%と同様の傾向であった。

川内原発の再稼働についても、南日本新聞社が同年5月に鹿児島県内で実施した電話世論調査では、再稼働に「反対」「どちらかといえば反対」と答えた人は、59.5%、「賛成」「どちらかといえば賛成」と回答した人は36.8%であった他、朝日新聞社が同年7月26日、27日に実施した全国電話世論調査では、反対が59%、賛成が23%であり、時事通信社が同年8月7日〜10日に実施した全国世論調査では、「反対」「どちらかといえば反対」と答えた人は計57.9%、「賛成」「どちらかといえば賛成」と答えた人は計36.7%であった。

以上のように、原発反対の世論は、福島第一原発事故以降現在まで一貫しており、川内原発をはじめとする原発の再稼働にも多数の国民が反対の意思を有していることが明らかになっている。

 

4 原発の稼働は倫理的に許されないこと

  そもそも、原発の稼働は、被曝労働の犠牲が不可避である上、トイレ無きマンションと言われるように、その処理方法が決まっていないにもかかわらず、生命にとって有害な放射性廃棄物を大量に排出し、その処理のツケを将来世代に押しつけるものであって、倫理的に許されないものである。

 

5 川内原発を再稼働させることによって、重大事故が発生するおそれがあるこ

 と

  川内原発の再稼働申請については、原子力規制委員会が新規制基準に適合しているとの内容の審査書案を公表しているが、同委員会の田中俊一委員長が「安全審査ではなく、基準の適合性を審査したもの。基準の適合性はみているが、安全だとは申し上げません。」と述べているように、川内原発の安全性を担保するものではない。

  福島第一原発事故の原因となった東北地方太平洋沖地震が想定をはるかに上回る規模の地震であったことからも明らかなように、地震や火山等の自然の前では人間の能力に限界があり、起こりうる最大の地震や噴火を正確に予測することは困難である。そうである以上、想定を上回る地震や噴火に原発が襲われ、重大事故が発生するおそれは常にあるのである。

  実際に、川内原発周辺には、桜島など活発な活火山が多く、過去に巨大噴火を起こした痕跡も複数ある。原発周辺で巨大噴火が起これば、原発が壊滅的な被害を受け、重大事故に至ることが懸念される。貴社は、巨大噴火を予知することが可能であるとの前提で安全対策に問題はないと主張しているが、巨大噴火を正確に予知することが困難であることは、多くの火山学者が指摘しているところである。

  そして、重大事故が発生した場合には、多数の住民を迅速に安全な場所まで避難させる必要があるが、川内原発の立地周辺自治体が策定した避難計画は、到底実効性のあるものとは言えない。特に高齢者や乳幼児などの避難弱者をどのようにして避難させるのか、避難の交通手段をどのように確保するのかといった問題については未解決のままである。

以上のとおり、川内原発は重大事故が発生するおそれがあり、その場合には、多数の住民が高い放射線量に被曝するという事態が起こることになる。

 

6 結論

  以上のように、原発の再稼働は、福島第一原発事故の教訓を生かさず、多数の国民世論に反し、倫理的に許されないものである。

加えて、大飯原発3、4号機運転差止請求事件における福井地裁判決が述べるとおり、原発の稼働は、法的には電気を生み出すための一手段たる経済的活動の自由に属するもので、憲法上、生命を守り生活を維持するという人格権よりも劣位に置かれるべきものであるから、人格権を侵害する具体的危険性があってはならないものであるところ、川内原発には上記のとおり重大事故が発生するおそれがある。

 よって、当会は、貴社に対して、川内原発の再稼働をしないよう求める。

 

以上